保険とアクチュアリー

どうもミノカサゴです。

今回は初めての記事ということで、アクチュアリーその活躍領域の概観について書こうと思います。アクチュアリーは近年理系のスキルが活きる職種として知名度が高くなっており、今なお活躍の幅が広がっている職ということで、ぜひ就活生の方に興味を持っていただければうれしいです。(そして本社勤務が約束されている点もいいところです)

アクチュアリーとは

アクチュアリーとは、かみ砕いて説明すると、「保険数理の専門家」または「保険専門のデータアナリスト」のことです。

また、日本において正式な意味では、日本アクチュアリー会の正会員のことを指します。しかし、実際にはアクチュアリー試験にまだ合格していなくとも、アクチュアリアルな仕事に携わることはできます。そのため、こうした見習い生も含めてアクチュアリーといっていることもある気がします

ちなみに、アクチュアリー試験は一次試験は共通ですが、二次試験が生保、損保、年金に分かれています。このことから、アクチュアリーには、生保アクチュアリー、損保アクチュアリー、年金アクチュアリーの3種類がいます。しかし、どの科目を選択したとしても、同じ正会員になれるため、資格上の区別はありません。

アクチュアリーの活躍するフィールド

アクチュアリーの活躍する業界は主に三つあります。その三つとはズバリ、生命保険損害保険年金(主に信託銀行)の三業界です。もちろん例外はあります。例えば監査法人共済組合、数理コンサルタントなどです。ただ、広義の解釈をすると、これらも上の三業種の一環に含まれるわけで、アクチュアリーは主にこれらの業界で活躍しているといえるでしょう。

生命保険と損害保険

生命保険と損害保険は似ています。どちらも仕組みは「加入者から定期的に(または一度に)お金(保険料)をもらい、加入者に異常事態が発生したときにお金(保険金)を払う」というものです。(保険料と保険金、紛らわしい!)

二つの違いとして、生保は主にヒトに対する保険(死亡保険や養老保険)、損保はモノに対する保険(自動車保険や火災保険)、なんて言われたりますが、休業補償や傷害保険など両業界にまたがる保険なんかもあったりします。詳しくはテキトーにググって下さい。

ちなみに法律により、生保会社は自動車保険など定番の損害保険は扱えず、損保会社は死亡保険など定番の生命保険は扱えません。こうした法規制によって、どちらかというと損保の方が多様なリスクを扱えます(火災、傷害、船舶、自動車、ホールインワン保険などその他ユニークな保険など)。そのためアクチュアリー就活生の中で、損保を志望する動機としてはこうしたリスクの多様さを挙げる人は多かったです。一方で、生保を志望する動機としては、生保がアクチュアリーの発祥であり重宝されやすいこと人の生死がテーマであり社会性が高いこと多かった印象がありました。

また、生保は、会社数が最も多く、歴史が最も古く、アクチュアリーの数も最も多いです。アクチュアリー全体の6~7割を占めています。一方、損保は、生保に次いでアクチュアリーの歴史が古く、アクチュアリー全体の3割ほどが損保アクチュアリーとなっています。

保険会社に勤めるアクチュアリーの主な活躍部門としては、各種の商品数理部門、経理部門、リスク管理部門の三つがあります。この他にも、資産運用部門、 イノベーション推進部門、IT部門などにアクチュアリーがいることもあるほか、海外の関連会社で働くアクチュアリーもいます。

年金(信託銀行)

日本の年金制度は三階建てです。国民年金公的年金企業年金(と個人年金)の三つです。信託銀行ではこの三つ目の、企業年金個人年金を扱っています。

年金事業の仕組みは、「加入者から定期的にお金(掛金)をもらい、加入者が定年に達したときに(または”から”)お金(年金)を払う」というものです。こう書くと分かると思いますが、保険の仕組みとかなり似ています。このような本質が似ていることから、年金を考えるうえで必要な素養は年金と保険(特に生保)で類似しており、同じアクチュアリーという資格に属しているわけです。アクチュアリー試験も、年金数理と生保数理は似ているらしいです。

注意点としては、企業年金は企業ごとにオーダーメイドに仕組みや掛金、年金額などを決めていくため、企業へのコンサル的な要素が強いという傾向があります。 また、生保会社も企業年金を扱っていることが多いです。(僕は信託銀行の就活をしなかったのですが、この理由は、年金なら生保でも扱えるだろうという考えと、コンサル的要素が強く数理的要素は弱いだろうという考えがあったことです。)

また、年金は、アクチュアリーの歴史が最も浅く、年金アクチュアリーアクチュアリー全体の1割ほどしかいません。

僕は就活であまり信託は見ておらず、具体的な働き方は分かりませんが、おそらく保険と同じような部門があるのだと思います。

共済(JA共済連など)

共済とは、「組合員がお金(掛金)を定期的に払い、組合員にアクシデントが起きたときにお金をもらえる」という仕組みです。このように共済は、年金と同じく、保険とかなり仕組みが似ています。

しかし、保険との違いはいくつかあります。例えば、共済は非営利な事業でなければなりません。また、従う法律も保険と共済では異なっており、共済事業は保険業法に縛られないため、生命保険的なリスクと損害保険的なリスクを両方扱うことができます。そのため、自動車の保障と人の死亡保障といった保険会社では実現できない組み合わせの保障を実現することができます。

アクチュアリーの区分としては、生保、損保、年金しかないため、共済でもこれらのアクチュアリーが働いています。そのため、基本的には保険と同じような仕事内容になります。

コンサル(監査法人と数理コンサル)

事業会社としてアクチュアリーが必要な会社は主に上記の三つですが、この他にもアクチュアリーの活躍フィールドはあります。コンサルタントです。 特にアクチュアリーによるコンサルを積極的に行っている会社には、監査法人(EY, PwCあらた など)と、数理コンサル( Milliman  など)があります。一方でクライアントとなる会社は、主に保険会社や信託銀行であり、アクチュアリアルな業務のコンサルを、第三者のコンサル会社に所属するアクチュアリーが解決しています。こうしたクライアントの幅広さから、コンサル会社では、生保・損保・年金のすべてのアクチュアリーが在籍しています。

また、コンサルの内容は数理モデルの開発や、商品設計、IFRS導入など多岐にわたっており、プロジェクト単位で活動しています。

 また、監査法人ではアクチュアリーは保険会社の監査も行っています。そのため、監査法人アクチュアリーの仕事は、監査とコンサルという二本柱になっています。